ラピッドサイトは、ビジネス向けのホスティングサービスを提供しているブランドで、現在は業界最大手のGMOグループが運用しています。
ラピッドサイトといえば、VPSサーバー(仮装専用サーバー)が特徴であり、VPSサービスを主軸に他のサービスを横展開しています。特にVPSサービスとしての歴史は古く、提供を開始して16年になります。業界の中でもかなり歴史あるホスティングサービスといえます。
VPS利用が不要の場合は、同じくGMOグループのiCLUSTAを選択される方が多いのではないでしょうか。iCLUSTAも複数アカウント運用していましたので「GMOクラウド(iCLUSTA+)の評判は?気になるメリットとデメリット」に私なりの評価をまとめています。
私はビジネスで8年間、ラピッドサイトのホスティングサービスを利用してきました。ベンダーとして10社ほどのクライアントに提供していましたし、ラピッドサイトに限らずですが、レンタルサーバーのプランは不定期でスペックや名称が変わることが多いため、最終的には10~15プランほどを経験したことになります。
「8年間も契約を継続していたなら何の不満もなかったのでは?」と思われるかもしれませんが、すべてが順風満帆だったわけではありません。
レンタルサーバーは、一旦契約するとどこかへ移行するのに大変な時間と労力がかかります。ビジネス利用の場合は特に慎重にならざるを得ませんので、多少のトラブルであれば目をつむって我慢するということもよくありました。
そうやって運用を続けているうち、結果的に8年間ラピッドサイトを使い続けていたというのが本音です。そういう意味ではラピッドサイトはビジネス利用に向いているいえるかもしれません。
以下より、私が契約していたときに起こったラピッドサイトの最大の出来事を書いています。
当時は本当に血の涙が出るほど悔しい思いをしながら修正に追われる日々を過ごしました。マニュアルもない、サーバー停止まで時間もない、という状況でなんとか乗り切った出来事です。
この出来事があったからこそ、現在のラピッドサイトのスリムな営業ができていると私は思っています。ですので、今ラピッドサイトを契約されている方は円滑な利用環境に生まれ変わっています。そこは安心してもらって大丈夫です。
2015年 マイグレーションを行使
ラピッドサイト(GMOクラウド株式会社)は2015年に大規模なマイグレーションを行いました。正確に言うと2015年9月現在もマイグレーション行使は続いています。この影響は1日や2日単位でなく数ヶ月に渡って障害が断続的に続いています。
現時点ではラピッドサイトの主要プランであるVPSや共用サーバーを契約中のユーザーはマイグレーション行使の方針に従うしかありません。これに従いたくない場合は自ら別のホスティングサービスを探すことになりますが、サーバー移設にかかるコストや時間的な制約もあり、その選択は現実的ではないと言えるでしょう。
サーバー移設をする予定の無かった契約者にとって、今回のマイグレーション行使にはデメリットしか見えません。むしろこれをきっかけに移設を検討する人も多かったと思います。
マイグレーション行使により「最新の筐体になる」とか「スペックが向上する」というラピッドサイトの主張はこちらがわざわざ望んだことではありません。あくまでラピッドサイトの都合です。
なぜ強制マイグレーションを行ったのか
ラピッドサイトによる強制マイグレーション行使は、ラピッドサイト自身がホスティング契約をしていたベンダー企業のサービス提供終了が引き金となっています。私としては、そもそもラピッドサイトが自前でホスティングしていなかった事実に驚きましたが…。
今後はラピッドサイトが自社でホスティングサービスを提供することとなり、新しい環境への移設が必要となったわけですが、もっと余裕を持って契約者に告知できなかったのでしょうか。契約者への案内には以下のような記載があります。
各種ホスティングサービスの提供元ベンダーであるNTT-Verio社にて、ホスティングサービスの提供を終了する旨の発表が行われたことを受け、弊社にてご提供しております各種ホスティングサービスを刷新する運びとなりました
案内を見てまず思ったことはなんと他人行儀なんだということです。「自社ではなくベンダーの都合です」というように受け取れます。
そして、望んでもいないのに勝手にスペックを刷新するなということです。IPアドレスが変わるだけでもWebやメールに関して対応が必要なのにも関わらず、さらにスペックまで刷新するとは契約者にどれだけの負担がかかるのか考えているのでしょうか。
既存の契約者には上記のような案内が通知されましたが、ホームページ上では「新プランをリリース」や「筐体を刷新」というような前向きなリニューアルのように表記されています。この裏で既存の契約者は大変な迷惑を被っているにも関わらず、こういった事情はあまり表に出していません。これから契約しようというユーザーには今回の諸事情はまず見えないでしょう。新規顧客獲得も大事ですが、既存顧客はもっと大事にしてほしかったです。
マイグレーション行使でユーザーが受ける影響
マイグレーションによる影響は1つや2つではありません。コスト、時間、技術的な要素など様々な部分に影響しています。
そしてこのタイミングに合わせたかのように昔からのRSシリーズやRVシリーズを契約をしていたユーザーには「旧プランサービス提供終了」としても通知が来ます。しかし、プラン終了といっても現行の類似プランに移行されるわけでもなく、また、プラン名が変わるわけではないので、恐らくマイグレーション行使するための理由の1つなのだと推測できます。
サーバー筐体移設によるIPアドレス変更
VPSや共用サーバーなどラピッドサイトの主軸プランを契約していたほとんどのユーザーはこの影響を受けることになります。ラピッドサイトからの案内には「IPアドレスが変わります」と当たり前のように記載がありますが、これだけでもかなりの影響が発生します。
WebアプリケーションをIPアドレス指定で動作させていた場合や、メールのPOP/SMTPサーバーをIPアドレス指定にしている場合は変更が必要です。メールを利用している社員が100人いれば、100人分のメール設定を変更しなければいけません。とんでもない迷惑です。
新旧のサーバースペックが全く異なる
今回のマイグレーションでは、サーバースペックを新旧でほぼ同じ筐体へ移設されたプランもあれば、共用サーバーを契約している場合などはスペックのほとんどが刷新され、IPアドレスの変更に加え、アプリケーションやデータベース、CGIなどの修正が必要になります。新筐体で標準搭載されるデータベースはMYSQLで、これまでPostgreSQLを利用していたユーザーはMYSQLへ強制移行させられるのか、そのあたりは未定のようです。
現行サーバーで問題なく動作していたプログラムは修正を余儀なく求められ、SSIでも利用できなくなるコマンドが多数存在します。vinstallも今後は利用できないようです。このような状況が発生してもラピッドサイトは「新しいサーバー環境ではご利用いただけません」という回答です。
これによって生じた開発会社や制作会社の工数は誰が補填してくれるのでしょうか。
データベース名も変えられてしまう
共用サーバーに移設されたphpmyadminは新サーバーのデータベースに繋がっていない状態です。旧サーバーに残されたデータベースはラピッドサイトのコントロールパネル内にあるデータベース移行ツールを使うように指示されるわけですが、これがまた不便です。
移行ツールで新サーバーにデータベースを作成する際、既存のデータベース名を引き継げず、新規のランダム数字のようなデータベース名が割り当てられます。ユーザーも契約者アカウント(マスターユーザー)にするように指定されていますので、データベースを移設しても既存の環境設定を変更しなければ使い物になりません。本当に本当に面倒くさいです。
さらに新サーバーのデフォルト文字コードをラピッドサイトはEUCにしています。これまでUTF-8で運用されていた方も多いと思いますが、そのような場合は移行後に文字化けする可能性が高いので、DNS切替前に一通りチェックしておきましょう。
共用SSLのURLも変わる
VPSプランでWebサイトに共用SSLコンテンツを利用している場合は以下のようにURLが変更になります。ここも忘れずに変更しなければいけません。
- 【旧SSL】 https://(ユーザーID).securesites.com/
- 【新SSL】 https://(ユーザーID).solidsystem.net/
共用サーバーを契約している場合はこれとも違う共用SSLになります。契約内容によって少しずつサブドメインの部分が異なるようですので注意してください。
ユーザー管理などを行うコントロールパネルをSSLでアクセスしていた場合もURLは変更となりますのでブックマークやお気に入りに登録していた方は注意しましょう。マイグレーションにより新旧サーバー両方がWeb上で稼動している期間中は旧SSLでもコントロールパネルにログインできますが、そこでの操作は旧サーバーに適用されている状態のため、ユーザーを作成したのにメールやFTPにログインできないというような錯覚に繋がりますのでご注意ください。
なお、普段から「http」のドメインでアクセスしていた場合はあまり気にしなくても大丈夫です。
FTP暗号化通信ができなくなる
これまでのVPSではFTP暗号化通信ができていましたが、マイグレーション後のサーバーではデフォルトではFTP暗号化通信はできません。SFTPによる通信は可能ですが、FFFTPを利用しているユーザーにとっては別のアプリケーションを利用しなくてはいけないため不便が生じます。SFTPを利用する場合はWindowsの場合はWinSCPなどが一般的です。
コンフィグファイルを変更すれば従来通りFTP暗号化通信はできるようですが、一般の契約者にそういった操作をさせること自体が不親切な対応です。
サブホストも影響を受ける
ラピッドサイトのVPSではサブホストの運用が可能です。主契約しているドメインのサーバーで別のドメインを運用することができます。今回のマイグレーションにより主契約のドメインIPアドレスが変更になるため、配下で運用しているサブホストも同じように影響を受けます。
便利だと思って使っていたサービスがことごとく迷惑をかけてきます。
移設先のメールアカウントのパスワードも勝手に刷新
Webアプリケーション以外にメールへの影響もあります。メールサーバーとして使用していた場合はDNS切替によるプロパゲーション期間を考慮して、新旧サーバーで送受信できるようにメーラーへの追加設定が必要となります。その期間が終われば再び削除する対応も必要です。
さらに困ったことにセキュリティ向上の名目で新メールサーバーでのアカウントパスワードが勝手に刷新されています。新サーバーのメールアカウントパスワードが現行サーバーと同じにしてくれていれば、プロパゲーション期間への対応を知らないユーザーがいても、切替後は送受信がこれまで通りできたわけです。もちろんプロパゲーション期間の対応を無視することはメールをロスする可能性にも繋がりますのでそれを推奨するわけではありません。
しかし、新サーバーのパスワードが変更されたせいで、追加の設定をしない限りDNS切替後に100%送受信がエラー発生する環境となってしまっています。システムに詳しくないユーザーが現場で混乱する可能性は非常に高いと思います。
新サーバー移設日に現行サーバーがしばらく停止する
サーバー移設日(ラピッドサイトが新サーバーの準備をする日)は現行サーバーの最新ファイルを取得して新サーバーへコピーします。この際、サーバーの稼動を止めて対応するため、数十分~数時間ほど現行サーバーにアクセスできなくなります。
通常のWebページ閲覧だけならまだマシですが、カート機能を利用しているページの場合、ユーザーが購入手続きをしている途中でアクセスできなくなる可能性もあります。
移設予定時間も同日の午前中~夕方と幅があるため、この時間だけ止めればいいということができません。残念ですが、その日はメンテナンスとしておくほうがユーザーのためかもしれません。
障害情報に掲載されないトラブルが断片的に続く
マイグレーションは移設完了のお知らせが届いても本当の意味で終了ではありません。その後も断続的に契約ドメインのホームページが表示されない、メールの送受信ができない等のトラブルが生じます。これらのすべての障害情報が公式サイトに掲載されるわけではありません。
マイグレーションは物理筐体を共有している他社の移設作業の影響を受けます。自社が新サーバーへ移設されても他社のマイグレーションが一通り完了するまではどのタイミングで接続遅延が発生するか分かりません。解決されたと思っても、翌日にはまた接続遅延が発生することが多々あります。
旧サーバーは約30日~60日で強制停止
VPSプランか共用サーバープラン、または終了対象プランを契約しているかによって少し異なりますが、旧サーバーの停止日も一方的に決められています。
マイグレーションが行使される日程もラピッドサイトより一方的に通知があり、旧サーバー停止までの日数もプランにより30日~60日程度となっています。古いタイプのプランを契約していた場合は一番短い30日でサーバー停止されることが多そうです。
新サーバーのスペックやバーチャルホストが利用できる日時も不定期で報告があるため、計画を立てて対策することが余計に難しくなっています。
電話サポートがほとんど使えない
今回のマイグレーションはラピッドサイトの主要サービス契約者がほとんど対象となるため、サポート窓口の混雑ぶりは尋常ではありません。電話サポートは1時間以上待っても繋がらないこともあります。業務中に問い合わせをしようとして1時間も待っていられませんので、せいぜい10分~20分待つのが限界でしょう。つまり、電話サポートによる対応はほとんど期待できません。
移設準備のための問い合わせを行う場合は、今のところメールでの問い合わせに頼るしかありません。個人的には電話サポートがあることがラピッドサイトの魅力であったため、今の状況は他社のホスティングサービスと比べてもそれほど優位性はなくなっています。問い合わせのスピード感が非常に遅くなりました。
ただし、メールサービスは原則24時間以内に返信してくれるので必要な場合は電話が繋がるのを待つよりも積極的に使っていく価値はあります。
最後に
私は長らくラピッドサイトでお世話になっており、今回の事態が発生するまではラピッドサイトは優良企業と捉えていました。電話サポートの対応やサーバー稼動状況なども良好で申し分ないホスティング先でした。
しかし、今回の事態でその信用は大きく落ちました。これまで信頼していた他のユーザーからの評判も下がってしまう可能性はあると思います。
長く契約をしているユーザーに対しては従ってもらうのは当然であるという前提で淡々と マイグレーションを行使しているラピッドサイトが信用なりません。「またいつ勝手なことをするかもしれない」という疑心も湧いています。
ラピッドサイトを信頼して長く契約してきたユーザーに対してあまりにも残念な対応だと思います。ラピッドサイトに対する信頼が少しずつ回復するのか、逆に新たなホスティング先を考えなければいけないのか、ラピッドサイトの動向を見て検討していきたいと思います。
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