トヨタ自動車では「修繕」と「修理」の違いをはっきりさせているそうです。この考え方はメーカーでなくてもどのような業種でも当てはまると思います。
まずは国語辞典でこの2つの単語の意味を調べてみましょう。それぞれの解説は下記の通りです。(旺文社 国語辞典 改訂新版より)
【修繕】こわれた部分をつくろい直すこと。修理。
【修理】つくろい直すこと。修繕。
どちらも「つくろい直すこと」という意味でほぼ同じと捉えることができます。また、それぞれが類語として紹介されていることからも辞書上では大きな違いはないと言えるでしょう。
トヨタ生産方式とは
では、トヨタ自動車での「修繕」と「修理」はどのような定義付けがされているのでしょうか?
(株)OJTソリューションズ編著の「トヨタの口ぐせ」には下記のように書かれています。
「修繕」は繕(つくろ)うだけ。機会が故障したときは、応急措置だけを施してすぐに動かしてしまう。真因(故障の真の原因)を潰していないから、故障はすぐに再発する。モグラがいったんは引っ込んだとしても、すぐに出てくる。
「修理」とは、真因を取り除いて、二度と同じ故障が起こらないようにすることをいう。
辞書の解説とは少し異なるかもしれませんが納得のできる解釈です。この「モグラ」というのは「モグラ叩きゲーム」を指しています。これについては下記のように述べられています。
不具合というモグラが出てきたら、それを潰す。次に、別のモグラが出てくれば、それを潰す・・・。そうこうしているうちに、最初のモグラがまた出てくる。こんな作業をしながら設備を使っていたら、無駄な時間ばかりかかってしまう。忙しくて仕方ない。
私の会社の場合に置き換えると共感できる部分があり目からウロコでした。基幹システムの開発を行っていると導入している得意先から不定期でトラブルやエラーの問い合わせがあります。
ついやってしまいがちな「モグラ叩き生産方式」
請求書の金額と請求一覧表の金額が一致しないとか、商品在庫数が実際の数と一致しない、など得意先側のオペレーションミスも含めてよくあるトラブルです。
こういったトラブルの対応としてSQLで直接データを修正して解決というシーンが実際にあります。
トラブルが発生した原因が必然なのか偶然なのかの判断がつけば良いのですが、全く原因が特定できない場合、とにかく得意先の業務遂行を優先して直接データベースの数値を本来の正しい数値に置き換えるわけです。「今日中に正しい請求書が出力できないと大変なことになる!」と半分脅されるわけで・・・。
得意先としても、データさえ正しくなれば業務が続けられますので、それ以上は原因追求に時間を割くことはしなくなってきます。私たちも対応履歴を残して完了扱いとします。
しかし、このような対応は「しのぎ」に過ぎないとも思っています。実際に同じトラブルが発生することは稀ではありますが、半年以内に同じようなトラブルが発生した場合は「前回、時間を割いて原因追求していれば今回のトラブルは発生しなかったのではないか」と思ってしまいます。
得意先に状況を確認して調査をする時間が前回と同じようにかかってしまい、効率の悪い仕事をやっているなと思うことがあります。
不具合が出てきたら、その機械を徹底的に「修理」してくださいと指導しています。「修理」とは理にかなった直し方のこと。真因をしっかり追究し、二度とモグラが出てこないようにする。そうしないと、いつまでも同じことの繰り返しになってしまう
まるで私の心が見透かされているようなお言葉・・・ありがたや。私の場合「機械」を「基幹システム」に置き換えればそのまま受け入れることができます。
最後に
今回ご紹介した内容はどのようなビジネスでも当てはまることだと思います。
「モグラ叩き生産方式」はトラブルが起きた時の対応として一番早く解決でき、目の前にいるお客様を満足させるには十分かもしれません。しかし、企業として考えれば何も改善できておらず、非効率であることが分かります。
私の会社が「トヨタ生産方式」をそのまま取り入れられる土台があるかと言えば「?」マークが付きますが、それでも見習うべき考え方がたくさんあります。
皆さんも自分の会社や仕事意識を思い返して、もし共感できる部分があれば取り入れられてみてはいかがでしょうか。
そして、この節の最後はこう締めくくられています。
何回も出てくる不具合から、真っ先に潰していく。そして「修繕」ではなく「修理」をする
かしこまりました m(_ _)m
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